「ゲーミングPCを買おうと思ってるんだけど、『ボトルネックを解消しないと性能が出ない』みたいなことを聞いたんだよね」って人に読んでほしいページです。
「ボトルネック」という概念を知り、買おうと思っているゲーミングPCが性能を出しきれないことを心配する人は多い。
このページでは、ゲーミングPCにおけるボトルネックを解説する。
このページを読めばボトルネックについて理解でき、どのような構成のゲーミングPCが望ましいのかがわかる。
PCでボトルネックが起きるとどうなる
PCでボトルネックが起きると、性能をフルに出しきれなくなる。
ボトルネックとは瓶の首が細くなっている部分が由来であり、一連の作業工程の中で生産性が低く、全体の生産性低下を招いている作業のことを指す。
ゲーミングPCでは、全体の処理を担当するCPUと、CPUから命令を受けて映像を処理するグラボとのボトルネックを言及するケースが多い。
例えばCPUの命令速度がグラボの処理速度より遅い場合、グラボは次の命令が来るまで暇になり、グラボ性能を活かしれない。
反対にグラボの処理速度がCPUの命令速度より遅い場合、CPUはグラボ待ちをしなければならず、CPU性能を活かしきれていない。
すべてのパーツの処理速度が同じという状態はまずありえないので、どんな組み合わせでもボトルネックは存在していることになる。
特にボトルネックが大きいと、「いくら高性能なグラボを搭載したとしても、CPUの性能不足によって、低性能グラボと同等のパフォーマンスになってしまう」ということが起きる。
CPUのボトルネックについて
最新に近いCPUとグラボを採用する場合、CPUのボトルネックを過剰に気にする必要はない。理由は以下の通り。
- ボトルネックは用途によって変わるから
- パフォーマンス低下を体感できないケースがあるから
- ボトルネックを回避するためには高価なパーツが必要になるから
ボトルネックは用途によって変わる
CPUのボトルネックが起きるかどうかは用途による。用途によってCPU性能が重要なことがあれば、グラボ性能が重要なこともあり、どちらが足を引っ張っているかが変わるからだ。
例えばゲームでもボトルネックが起きるタイトル、起きないタイトルがある。
以下はCPUをRyzen7 5800X3D、WQHD解像度で測定した結果だ。
Marvel’s Spider-Man Remastered | God of War | |
---|---|---|
RTX4070Ti | 72 | 126 |
RTX4070 | 71 | 104 |
RTX3070Ti | 71 | 95 |
RTX3070 | 68 | 89 |
Marvel’s Spider-Man Remasteredではどのグラボもほぼ同じフレームレートである一方で、God of Warではグラボ性能順にフレームレートが高い。
Marvel’s Spider-Man RemasteredではCPUがボトルネックとなっていて、グラボ性能だけを上げても意味がないというわけだ。
同じCPU/グラボの組み合わせでも用途によってボトルネックが起きるかどうかが変わる。様々な用途で使うゲーミングPCでボトルネックを気にするのは意味が薄い。
パフォーマンス低下を体感できないケースがある
CPUのボトルネックが起きているとしても、パフォーマンス低下を体感できないケースがある。
先ほど使った例を再度紹介する。このゲームではCPUがボトルネックになっていて、グラボ性能だけを上げたところで意味がない。
Marvel’s Spider-Man Remastered | |
---|---|
RTX4070Ti | 72 |
RTX4070 | 71 |
RTX3070Ti | 71 |
RTX3070 | 68 |
とはいえ、ユーザーがWQHD60fpsでプレイしているなら何の問題もない。ボトルネックが起きようが起きまいが平均60fpsは超えていて、ユーザーは60fpsでプレイ可能だ。
ボトルネックを回避するためには高価なパーツが必要になる
仮に「Core i5-13600Kではこのゲームでボトルネックが起きる。Core i9-13900Kに変えるべき」とわかったとして、実際にCore i9-13900Kに変える意味は薄い。
CPUボトルネックを回避するためにはCPUの性能を上げるのが一般的だが、グレードの高いCPUはゲームでは活かしづらい。高グレードのCPUはコア数の多さが特徴であり、コア数を必要としないゲーム用途では真価を発揮できないのだ。
1つのゲームでボトルネックを回避するために、わざわざ高グレードの高価なCPUに交換するのは無駄が多いと言わざるを得ない。
グラボのボトルネックについて
グラボのボトルネックについて言及されることは少ない。
主流なフルHD解像度ではグラボが足を引っ張るケースはほぼ無いことに加え、多くの人が「ゲーミングPCはグラボが重要」と思っていて、グラボから構成を考えるからだろう。
4K解像度ではグラボが担当する作業が多くなり、グラボがボトルネックになるケースがある。とはいえ4Kを選ぶ人はごく少数だし、4Kでゲームをする人は元々ハイエンドグラボを選んでいて、性能を上げることが難しいのだ。
メモリのボトルネックについて
メモリのボトルネックはCPUのボトルネックと比べて誤差のようなものであることもあり、無視しても良い場合が多い。
メモリ規格によるボトルネック
DDR4-3200 | DDR5-4800 | DDR5-5600 | |
---|---|---|---|
Watch Dogs Legion | 132 | 140 | 142 |
Cyberpunk 2077 | 124 | 124 | 139 |
Red Dead Redemption 2 | 146 | 147 | 147 |
同じCPU・グラボを使っていても、メモリ規格(データ転送速度や転送量)によってフレームレートに違いが出ることがある。
とはいえ数%の違いであり、ゲームによっては差がない場合もある。
メモリの規格について詳しく知りたい人は別ページを読むと良い。
›DDR4とDDR5の違いを比較し、どちらを選ぶべきかを解説
メモリ容量によるボトルネック
搭載メモリ | 平均フレームレート |
---|---|
8GB | 94fps(84%) |
16GB | 100fps(89%) |
32GB | 112fps(100%、基準) |
64GB | 112fps(100%) |
測定に使用したゲームはHogwarts Legacyだ。Hogwarts LegacyはフルHD最高設定で16GB以上のメモリを使用する。
8GBの場合は84%、16GBの場合は89%のフレームレートとなっていて、メモリ容量によるボトルネックが起きていることがわかる。
Hogwarts Legacyのように16GB以上のメモリを使用するゲームは主流ではないが、最新ゲームでは徐々に増えてきている。フルHD最高設定にこだわりがあるなら、32GBのメモリを選ぶ価値はあるという時代になっている。
›ゲーミングPCのメモリ容量目安【8GB vs 16GB vs 32GB vs 64GB】
SSDのボトルネックについて
SSDのボトルネックはフレームレートではなくゲームのロード時間やOSの起動時間など、待ち時間に関係してくることが多い。
例えば、速度が2倍のSSDを使用したところで、ゲームのロード時間が1/2になるわけではなく、誤差のような差しか出ないことが多い。
これはインターネット速度がボトルネックになっていたり、そもそもゲームでは速度を必要としないケースが多くて差が出ないという原因がある。
もちろん、大容量ファイルを扱う場合は速度がボトルネックとなって書き込み時間が長くなることはある。
ゲームをするだけなのであれば、SSDのボトルネックを気にして高価な製品を選ぶ必要はない。
ボトルネックチェッカーはあてにならない
ネット上にはボトルネックチェッカーという、CPUとグラボの相性を診断してくれるサイトがあるが、あてにならないと思って良い。
Core i5-13400 RTX4060Ti | Core i7-13700 RTX4060Ti | |
---|---|---|
ボトルネック度 | 7.7% | 0% |
そもそも「ボトルネック度100%」がどのような状況を表しているのがわからず、7.7%や0%という数字にどのような意味があるのかがわからないというのが1つ。
さらにもう1つ。この測定はグラボ負担が大きいタスクでの数値であり、Core i5-13400×RTX4060Tiの場合は、RTX4060Tiの処理速度にCore i5-13400が追いついていないことを示している。
Core i7-13700×RTX4060Tiの場合はCore i7-13700がRTX4060Tiに遅れを取っていないことを表しているが、逆に言えばCore i7-13700の性能は過剰というわけだ。(ちょうど同性能なのかもしれないが)
つまりRTX4060Tiを選ぶ場合、Core i5-13400にするとCPUがやや性能不足で、Core i7-13700にするとCPUが過剰ということになる。どちらにしても無駄が出ていることになってしまう。
ボトルネック度の数値自体にどれほどの信憑性があるのかがわからないということを無視したとして、どちらにしてもボトルネックは発生するので、気にするだけ無駄というわけだ。
「ボトルネック度が高い=性能が低い」ではない
Core i5-13400 RTX4070Ti | Core i7-13700K RTX4070 | |
---|---|---|
ボトルネック度 | 16.3% | 0% |
Core i5-13400×RTX4070TiとCore i7-13700K×RTX4070でボトルネック度を測定すると、前者は16.3%と高めの数値、後者は0%でボトルネックはないとの判定になった。
これらの組み合わせでゲームのフレームレートを測定すると以下の通り。
Core i5-13400 RTX4070Ti | Core i7-13700K RTX4070 | |
---|---|---|
Cyberpunk 2077 | 69 | 62 |
Red Dead Redemption 2 | 102 | 86 |
Forza Horizon 5 | 117 | 108 |
ボトルネック度が高いと判定されたCore i5-13400×RTX4070Tiのほうが高いフレームレートを出せている。
ボトルネック度が低いほうが高性能だと思っている人も多いが、必ずしもそうなるわけではない。
ボトルネックを解消する方法
ゲーミングPCにおけるボトルネックを完全に解消することはできないが、ボトルネックを小さくすることはできる。ボトルネックをなるべく解消するためには、バランスの良い構成にすることが重要だ。
1つのパーツが飛び抜けて高性能だとしても無駄になる可能性が高く、1つのパーツが飛び抜けて低性能だと全体の足を引っ張ってしまう。
例えば長年使用しているゲーミングPCでグラボだけを交換する場合、CPUのボトルネックが顕在化する可能性が高い。グラボは世代間の性能差が大きく、古いCPUと最新グラボの性能差が大きいからだ。
そのため、グラボを交換する際はCPUも新しいものにすることで、ボトルネックを小さくできる。
ボトルネックの小さいゲーミングPCを手に入れる方法
ボトルネックの少ないゲーミングPCが欲しいなら、BTOショップを利用すると良い。BTOショップは受注生産のパソコン専門店のようなものだ。
BTOショップのゲーミングPCはショップ側が検証してくれていることに加え、バランスが良い構成になっていることが多い。
例えばCore i5-13400×RTX4090のようなアンバランスな構成のモデルは扱われていない場合がほとんどだ。ボトルネックの観点もあるだろうが、RTX4090を必要とする作業を行う人がCore i5-13400で満足できるはずがないという実用性の面からも考えられている。
他パーツに関しても、エントリークラスのモデルには程々のもの、ハイエンドクラスのモデルには高性能なものが搭載されている傾向にある。
全体としてバランスが取れているゲーミングPCが欲しいなら、BTOショップの利用をおすすめする。
›BTOパソコンメーカーのおすすめと選び方を紹介
ゲーミングPCのボトルネックまとめ
このページでは、ゲーミングPCのボトルネックについて解説した。
内容を振り返ると以下の通り。
- ボトルネックとは、他パーツの足を引っ張っている低性能な部分を指す
- CPUのボトルネックが特に取り上げられるが、過剰に気にする必要はない
- ボトルネックが小さく、全体としてバランスが良いゲーミングPCが欲しいなら、BTOショップの利用がおすすめ
ボトルネックはどの組み合わせでも発生するものであり過剰に気にする必要はないが、バランスの取れたゲーミングPCを選びたいならBTOショップを利用すると良い。
›BTOパソコンメーカーのおすすめと選び方を紹介