
「ゲーミングPCが欲しいなって思ってるんだけど、メモリのDDR4とかDDR5とかって何なの?4か5かで値段が違うけど、どんな性能差があるのかが知りたいな」って人に読んでほしいページだよ。
このページの内容は以下の通り。
- メモリ規格に関する5つの前提知識
- DDR4とDDR5の違い
- DDR4とDDR5のゲーム性能・クリエイティブ性能の違い
メモリを選ぶときにDDR4やDDR5という用語に戸惑う人も少なくない。このページを見れば、DDR4とDDR5の違いが分かり、ゲーム用途ならどちらを選ぶべきなのかを知ることができる。
メモリの規格に関する5つの前提知識
メモリの規格に関する基礎知識がないとDDR4とDDR5の違いをうまく理解できないので、まずはメモリ規格の基礎知識を簡単に解説する。
DDRとはDouble Data Rateの略
DDRとはDouble Data Rateの略だ。2002年以前にあったSDRというSingle Data Rateの上位互換的存在がDDRとなる。
SDRが1回のクロック信号で1回のデータの読み書きを行うのに対し、DDRは1回のクロック信号で2回のデータの読み書きを行う。SDRの2倍の速度でデータの転送ができるのがDDRという新技術というわけだ。
DDRの世代間には互換性がない
DDRは年々新しい世代が出ている。DDR、DDR2、DDR3…と続き、現在主流なのがDDR4とDDR5だ。
各世代には互換性がなく「今までDDR4のメモリを使ってたけど、DDR5に買い換えよう」というようなことはできない。
というのも、メモリを取り付けるマザーボードは1つのメモリ規格しかサポートしていないからだ。DDR4専用のマザーボード・DDR5専用のマザーボード、というように使用できるメモリの規格がマザーボードごとに決まっている。
メモリ規格を乗り換えたい場合はマザーボードごと交換しなくてはならない。
メモリクロックとクロック信号について
メモリには必ずDDR5-4800のような文字列が書かれている。前半のDDR5は先述したメモリの世代を表し、後半はメモリクロックを表す。
DDR5-4800の場合のメモリクロックは4800MHzで、1秒間に48億回のデータ転送ができることを示している。当然、数値が大きいほうがデータ転送速度がはやくなるため高性能と言える。
ただし、CPUとマザーボードにはメモリクロック数の上限が決められているので、使用するCPUとマザーボードに合わせたメモリクロックを選ぶことが重要だ。
また、先述したようにDDRは1回のクロック信号で2回のデータ転送を行っているため、メモリクロックが4800MHzの場合のクロック信号は半分の2400MHzになる。
ちなみに、メモリクロックもクロック信号も単位がMHzで紛らわしいため、メモリクロックの単位をMT/sと書くときもある。
メモリ帯域幅とメモリクロックの関係性について
メモリにはDDR5-4800のような文字列の他に、PC5-38400のような文字列がセットで記載されていることがある。前半のPC5はDDR5であることを表し、後半の数字はメモリ帯域幅を表す。メモリ帯域幅とは1秒間に転送できるデータの容量のことだ。
「よくわからない数値がたくさん出てきてめんどくさい」と思う必要はない。メモリ帯域幅とメモリクロックは密接に関連しているのだ。
メモリ帯域幅が1秒間に転送できるデータの容量を表し、メモリクロックが1秒間にデータ転送できる回数を表しているということは、両者の関係を数式で表すことができる。
1データの容量(=バス幅)は64bitなので、メモリ帯域幅とメモリクロックには以下の関係性があることがわかる。
=メモリクロック(MHz) × 64(bit) ÷ 8
(8で割るのはbitをByteに換算するため)
要するにメモリ帯域幅はメモリクロックを8倍にした数値になる。
例えばDDR5-4800 PC5-38400で見ると、4800を8倍すればきちんと38400と一致する。
DDR5-4800もPC5-38400も似たようなことを違う書き方で表しているだけであり、結局は数字が大きいほうが高性能ということだ。
メモリタイミングについて
メモリタイミングとは、メモリへの要求に対してメモリが応答するまでの時間を表す数値だ。メモリタイミングは40-39-39などと書かれていて、最初の40の部分がよく重視されるCAS Latency(CL)という数値になる。CL40ということは、メモリが応答するまでに40回分のクロック信号の待ち時間・遅延があるということだ。当然数字が小さいほうが遅延が少なく高性能と言える。
ただし、CLの大小だけが実際の遅延を決めるわけではない。メモリの規格(1秒間にクロック信号を何回飛ばすか)によってCL40(クロック信号40回分)が何秒なのかが変わるからだ。
実際の遅延は以下の式で表される。
DDR5-4800の場合、1秒間に24億回のクロック信号を発していて、CLは40だ。つまり実際の遅延は40÷24億=0.00000001667秒=16.67ns(ナノ秒)となる。
DDR4とDDR5の性能の違い
DDR4とDDR5の性能の大きな違いはメモリ帯域幅と遅延だ。標準電圧にも違いがあるが特筆するようなことではないのでここでは紹介しない。
DDR5のほうがメモリ帯域幅が高い
メモリクロック | メモリ帯域幅 |
DDR4-2133 | 17000MB/s |
DDR4-2400 | 19200MB/s |
DDR4-2666 | 21300MB/s |
DDR4-3200 | 25600MB/s |
DDR5-4800 | 38400MB/s |
DDR5-5200 | 41600MB/s |
DDR5-5600 | 44800MB/s |
DDR5-6000 | 48000MB/s |
一般的にDDR5のほうがメモリクロックが高いため、それに伴いメモリ帯域幅も高くなる。現在主流のDDR4-3200とDDR5-4800を比べると、1.5倍のメモリ帯域幅であることがわかる。
DDR4のほうが遅延が少ない場合がある
メモリクロック | CAS Latency | 実際の遅延 |
DDR4-2133 | 15 | 14.06ns |
DDR4-2400 | 17 | 14.17ns |
DDR4-2666 | 19 | 14.25ns |
DDR4-3200 | 22 | 13.75ns |
DDR5-4800 | 40 | 16.67ns |
DDR5-5200 | 32 | 12.31ns |
DDR5-5600 | 36 | 12.86ns |
DDR5-6000 | 36 | 12.00ns |
基本的な傾向として、DDR5のほうがCAS Latencyが大きいが、メモリクロックの高さによって実際の遅延は小さい傾向にある。
ただし、現在主流のDDR4-3200とDDR5-4800を比べると、DDR4-3200の実際の遅延が13.75nsなのに対し、DDR5-4800の実際の遅延は16.67nsであり、DDR4-3200のほうが2.92nsだけ遅延が少ない。
1nsは10億分の1秒なのでほんの一瞬の遅延に過ぎないので実際のパフォーマンスへの影響もほんのわずかだが、この差をどう捉えるかは人それぞれだ。
DDR4とDDR5のゲーム性能の違い
BTOショップではDDR4-3200かDDR5-4800が主流なので、この2つを比較していく。
フルHDでのゲーム性能の違い
ゲームタイトル | DDR4-3200 | DDR5-4800 |
Watch Dogs Legion | 128 | 133 |
Cyberpunk 2077 | 125 | 125 |
Assassins Creed Valhalla | 141 | 147 |
Red Dead Redemption 2 | 141 | 142 |
Far Cry 6 | 159 | 155 |
平均 | 138.8 | 140.4 |
割合 | 100%(基準) | 101% |
フルHD解像度でのフレームレートの差は以上の通り。DDR5-4800のほうが若干ゲーム性能が高い傾向にあるものの、誤差の範囲と言えるレベルの差しかない。
4Kでのゲーム性能の違い
ゲームタイトル | DDR4-3200 | DDR5-4800 |
Watch Dogs Legion | 54 | 53 |
Cyberpunk2077 | 49 | 49 |
Assassins Creed Valhalla | 58 | 62 |
Red Dead Redemption 2 | 84 | 84 |
Microsoft Flight Simulator 2020 | 49 | 50 |
平均 | 58.8 | 59.6 |
割合 | 100%(基準) | 101% |
4K解像度でのDDR4-3200、DDR5-4800間の差は以上の通り。フルHDのときと同じくゲームタイトルによってDDR4とDDR5のどちらが優位かが変わるが、誤差の範囲と言って良いレベルだ。
ゲーム性能目的でDDR5を選ぶ必要性は薄い
主流のDDR4-3200とDDR5-4800では、ゲーム性能の違いはほぼなかった。DDR5-4800のほうが若干フレームレートが高い傾向にあるものの誤差の範囲と言って良い。DDR5はメモリの価格だけでなく、対応しているマザーボードの価格も上乗せされるので割高感が強い。
ただ、DDR5の中で最も実際の遅延が大きいDDR5-4800の時点でDDR4-3200よりおおむねパフォーマンスが高いので、DDR5-6000なんかでは割と性能差が出ることが予想できる。
とはいえDDR5-6000はBTOショップでは扱いがないし、その分CPUやグラボにお金をかけたほうが性能の向上を見込める。
PCへの特別強いこだわりがない限り、DDR4-3200で十分と言える。
DDR4とDDR5の違いまとめ
- 仕様書上はDDR5のほうがおおむね性能が高い
- 現在主流なのはDDR4-3200とDDR5-4800
- ゲーム用途でDDR5-4800を選ぶ必要性は薄く、DDR4-3200で十分
このページではメモリの規格について解説した。メモリ選びでは規格の他に容量で迷うことも多い。自分に合ったメモリ容量を知りたい人は以下のページを読むと良い。
≫メモリの役割とは?ゲーミングPCに必要なのは16GB?32GB?