
「ゲーミングPCなら純正のCPUクーラーじゃダメって話を聞いたことがあるんだけど、何が違うの?CPUクーラーの種類とか選び方とかわからないんだよね」って人に読んでほしいページだよ。
このページの内容は以下の通り。
- CPUクーラーの種類や違い
- CPUクーラーの選び方やおすすめメーカー
このページを読めばCPUクーラーの違いがわかり、どんなCPUクーラーを選べば良いのかだけでなく、CPUクーラーに力を入れているBTOショップまで知ることができる。
CPUクーラーには空冷と水冷の2種類がある
CPUクーラーには、空気で冷やす「空冷」と、水で冷やす「水冷」の2パターンがある。
水の熱伝導率は空気の20倍なので、水冷クーラーのほうが冷却効率が高い。
反面、水冷クーラーの価格は空冷クーラーより高い傾向にある。
空冷と水冷の冷却の仕組みはそれぞれ以下の通り。
- 空冷:CPUからの発熱→ヒートシンクという金属部分が熱を吸収→ファンでヒートシンクに風を送って冷却
- 水冷:CPUからの発熱→チューブの中を通る冷却液が熱を吸収→ポンプで冷却液をファン部分に移動させる→冷却液をファンで冷やす
空冷にはサイドフロー型とトップフロー型の2種類がある

紫:マザーボード、橙:CPU、灰:ヒートシンク、水色:ファンと風、赤:CPUからの熱
空冷には、CPUに対して横から風を当てるサイドフロー型と、CPUに対して上から風を当てるトップフロー型の2種類がある。主流なのはサイドフロー型だ。
サイドフロー型とトップフロー型の違いは以下の通り。
サイドフロー | トップフロー | |
---|---|---|
メリット | ファンやヒートシンクを大型化しやすいので、冷却性能が高い。 ケース全体のエアフローを作りやすい | CPUだけでなくマザーボードにも風が当たるので、メモリや電源回路を冷やせる。 |
デメリット | 大型化の結果、サイドパネルやメモリ部分などに干渉しやすい。 CPUだけしか冷えない。 | ファンやヒートシンクを大型化できないので、CPUの冷却性能は控えめ。(マザーボードに直に干渉するため) |
最近では、ケースの前面から空気を取り込んで背面から排出するタイプのケースが多いので、ケース全体のエアフローに沿っているサイドフロー型が主流だ。
さらに最近のCPUは発熱量が多いのも、冷却力の高いサイドフロー型の普及を後押ししている。
水冷には簡易水冷と本格水冷の2種類がある

水冷には、簡易水冷と本格水冷の2種類がある。主流なのは簡易水冷だ。
簡易水冷は本格水冷より作りがシンプルなので、扱いやすい。
本格水冷はカスタマイズ性や自由度が高いが、定期的なメンテナンスが必要であり、ユーザーの技量によっては水が溢れてPC故障の原因になる。
簡易水冷は初心者でも扱いやすいので、簡易水冷のほうが人気がある。
CPUクーラーの価格による違い
空冷・水冷の価格帯別の特徴は以下の通り。
空冷 | 水冷 | |
---|---|---|
3万円~ | – | 冷却性能以外にもこだわるような人向け |
2万円台 | – | ハイエンドCPU向けの製品が多い |
1万円台 | 1万円台ならどれも似たりよったりの性能 ハイエンドクラス | ハイエンド空冷を上回ってくる製品が多い |
5,000円~1万円 | 1万円に近い製品は優れているものが多い ハイクラス | 微妙 低品質な製品もあり、おすすめしづらい |
~5,000円 | 人気が高い価格帯 しょぼい製品も多いが、優れている製品もある | – |
価格が高いほど冷却性能や品質、耐久性が高かったり、組み立ての手間が少なかったりするのは当たり前だが、具体的に何が違うのかを解説する。
違い1:ファンの大きさや数【空冷・水冷】
空冷 | 水冷 |
---|---|
92mm×1 120mm×1 140mm×1 92mm×2 120mm×2 140mm×2 | 120mm 240mm(120mm×2) 280mm(140mm×2) 360mm(120mm×3) 420mm(140mm×3) |
CPUクーラーの価格による違いの1つめは、ファンの大きさや数だ。
CPUクーラーは、ファンが大きくて数が多いほど冷却性能が高い傾向にある。多くの風を送ることができるからだ。
ただし、ファンが大きいとケースによっては入らなかったり、メモリなどの周辺パーツと干渉する場合もある。自作の場合は注意が必要だ。
BTOでは、干渉が起きないような組み合わせになっているので安心だ。
価格 | ファンの大きさ | ファンの数 | |
---|---|---|---|
AK400 | 3,000円 | 120mm | 1 |
AK620 | 8,000円 | 120mm | 2 |
ASSASSINⅢ | 10,000円 | 140mm | 2 |
空冷定番メーカー「DeepCool」からの抜粋だ。
価格が高いハイエンドクラスになるほど、ファンが大きかったりファンの数が多かったりすることがわかる。
違い2:静音性【空冷・水冷】
CPUクーラーの価格による違いの2つめは、静音性だ。
大きいファンを持つCPUクーラーほど、少ない回転数で多くの風を送ることができるので、静音性が高い。
また、価格が高くで高品質なCPUクーラーほど、ファンの軸がしっくりしていて音が出にくい。
水冷クーラーのポンプに関しても、高品質な製品ほど音が出にくい傾向にある。
ただし、ファンの回転数や数によって静音性は変わる。
あくまで同じ回転数・数の場合、高価なCPUクーラーのほうが静かな傾向にあるということだ。
違い3:ヒートパイプの本数【空冷】

空冷クーラーは、価格によってヒートパイプの本数が異なる。
CPUに接するベース部分から伸びている管がヒートパイプだ。
CPUの熱はベース部分に伝わり、ヒートパイプを通ってフィンに届けられる。フィンをファンで冷やすことで冷却が行われる。
ヒートパイプの本数が多いほど、CPUの熱がフィンに伝わりやすいというわけだ。
価格 | ヒートパイプの本数 | |
---|---|---|
AK400 | 3,000円 | 4本 |
AK620 | 8,000円 | 6本 |
ASSASSINⅢ | 10,000円 | 7本 |
空冷定番メーカー「DeepCool」からの抜粋だ。
価格が高いハイエンドクーラーほど、ヒートパイプの本数が多い傾向にあることがわかる。
違い4:ベース部分・ポンプの性能【水冷】
水冷クーラーは価格によって、ベース部分やポンプの性能が異なる。
ベース部分の金属が薄くて熱の吸収力が弱かったり、ポンプの性能が低かったりすると、ラジエーター部分(ファン)に力が入っていても意味がない。
よくわからないメーカーの360mm水冷クーラーが、しっかりとしたメーカーの240mm水冷クーラーに負けているというのはよくあることだ。
CPUクーラーの選び方
CPUクーラーの選び方は以下の通り。
- 純正クーラー(リテールクーラー)から変更しよう
- 空冷か水冷かを決める
- 価格を決める
自作や換装の場合はこれ以外に、使用ケースに入るかや対応ソケット、バックプレートの素材(樹脂より金属の方が良い)、デザインを気にする必要がある。
手順1:純正クーラー(リテールクーラー)はおすすめしない
ゲーミングPCの場合、純正クーラー(リテールクーラーとも呼ばれる)はおすすめしない。
多くのCPUには純正クーラーが付属している。BTOだと、純正クーラーが標準CPUクーラーになっていることも多い。
純正クーラーのファンは小さく、冷却性能が低くて音がうるさい。特にIntelの純正クーラーはポンコツだ。
高性能なCPUには純正クーラーが付属していないことを考えると、純正クーラーの冷却力は物足りないことがわかる。
純正クーラー | AK400 | |
---|---|---|
アイドル時 | 36℃ | 27℃ |
高負荷時 | 88℃ | 61℃ |
※高負荷時は、Cinebench R23マルチを10分間
純正クーラーとAK400を比べると、冷却性能が圧倒的に違うことがわかる。
AK400は3,000円の空冷クーラーであり、エントリークラスに位置づけられる。
にも関わらず純正クーラーとの性能差が大きい。
純正クーラーを使うより、少し予算を増やして別でCPUクーラーを付けたほうが圧倒的に冷える。
手順2:空冷か水冷かを決める
安価な空冷か、高価だが冷却性能の高い水冷のどちらをするかを決めよう。
ざっくりとした簡単な選び方は以下の通り。
空冷 | 水冷 |
---|---|
Core i5,Ryzen5 もしくは TDP65W以下のCPU (TDP105W以下のCPU) | Core i7以上,Ryzen7以上 もしくは TDP105~120W以上のCPU |
TDP | CPUの例 |
---|---|
65W | Intel:K付きモデル以外 AMD:無印モデル、Ryzen5000シリーズのRyzen7 5700X以下 |
105W | AMD:Ryzen7000シリーズのX付きモデル、Ryzen5000シリーズのRyzen7 5800X(3D)以上 |
120W以上 | Intel:K付きモデル AMD:Ryzen7 7800X3D以上 |
BTOの場合は、問題が起きずに安定的に性能を発揮できるようにCPUの性能がチューニングされている。そのため、純正クーラー以外であればどれを選んでも基本的に問題ない。
自作の場合はCPUの性能を全開にできるぶん、冷却が特に重要になる。目安としてTDP65WのCPUであれば空冷で十分だが、TDPが高いハイクラス以上のCPUの場合は水冷を選んだほうが安全だ。
手順3:価格を決める
空冷 | 水冷 | |
---|---|---|
3万円~ | – | 冷却性能以外のオプションにもこだわりたい人向け |
2万円台 | – | ハイエンドCPU向けの製品が多い |
1万円台 | 1万円台ならどれも似たりよったりの性能 ハイエンドクラス | ハイエンド空冷を上回ってくる製品が多い |
5,000円~1万円 | 1万円に近い製品は優れているものが多い ハイクラス | 微妙 低品質な製品もあり、おすすめしづらい |
~5,000円 | 人気が高い価格帯 しょぼい製品も多いが、一部の製品は優れている | – |
CPUクーラーは価格が高いほど性能や品質が高く、冷却性能や耐久性が優れている傾向にある。
基本的には、どこまでこだわりたいかで選べば良い。
特にBTOの場合は、構成にあったCPUクーラーが候補になっているので、どれを選んでも失敗することはない。BTO側がCPUの性能をチューニングしているので、誰でも扱いやすくなっているのもポイントだ。
自作でも、Core i9-13900KのようなハイエンドCPUだと360mmの簡易水冷一択というレベルになるが、よほど高性能なCPUを搭載しない限りは、ある程度のCPUクーラーで十分なケースが多い。
(そのあたりの見極めができない人は、そもそも自作をするべきではないが)
CPUクーラーのおすすめメーカー
CPUクーラーのおすすめメーカーは以下の通り。
- 空冷:DeepCoolかNoctua
- 水冷:優れたメーカーがたくさん
空冷クーラーならDeepCoolかNoctua
- DeepCool:AK400,AK620,ASSASSINⅢなど
- Noctua:NH-U12A,NH-U12S,NH-D15など
空冷クーラーなら、DeepCoolかNoctuaの2択だ。
高コスパのDeepCoolか、王者のNoctuaのどちらかを選べば間違いない。
特に最近のDeepCoolは優れた製品をたくさん出していて、Noctuaレベルの空冷クーラーもある。
低価格帯ではAK400が圧倒的であり、他クーラーを無価値にしているほどだ。
「空冷クーラーはDeeoCoolかNoctua以外を選ぶ意味がない」と言えるほどに優れたメーカーだ。
水冷クーラーは競合がたくさんある
- Corsair
- NZXT
- MSI
- DeepCool
高品質な水冷クーラーを作っているメーカーはたくさんあり、空冷クーラーと違って絞ることが難しい。上の4つ以外にも優秀なメーカーはあるのだ。
選び方のコツの1つとして、OEMメーカーであるAsetekのポンプを搭載している水冷クーラーは、信頼性が高いものが多い。Asetekは特許を持っている優れたOEMメーカーだからだ。
CPUクーラーに力を入れているBTOショップ「サイコム」
「サイコム」というBTOショップは、BTOショップの中では珍しく、CPUクーラーに力が入っている。というより、サイコムはゲーミングPC全体の品質を重視している。
サイコムのゲーミングPCには、空冷最強のNoctua製のクーラーが標準搭載されているのだ。
他のパーツに関しても、高品質パーツのみが採用されている。
一般的なBTOショップでは、価格を安くするために中品質パーツを採用することが多い。
CPUクーラーを含む全てのパーツが高品質なのは、サイコム独自の特徴だ。
品質を重視したいならサイコムで間違いない。
›サイコムはどんなBTO?「高い」の評判の真偽や独自の特徴を解説
CPUクーラーの冷却力が足りないとどうなる?
CPU性能に見合わないCPUクーラーを採用してしまって冷却力が足りない場合、CPUが本来の性能を出せなくなる。
最近のCPUには「サーマルスロットリング」という機能がついていて、CPU温度が100℃付近に達すると自動的にクロック(≒性能)を下げ、温度を下げる仕組みになっている。
Intel12世代以降やRyzen7000シリーズ以降のハイクラスCPUは、冷却が貧弱だと簡単に100℃に達する。
PCを自作する場合は、CPUに見合ったCPUクーラーを選ぶことが特に大事だ。
CPUクーラーの違いと選び方まとめ
このページでは、CPUクーラーの違いと選び方を解説した。
内容を振り返ると以下の通り。
- 純正クーラーは質が低いのでおすすめしない
- ミドルクラスのCPUまでなら空冷クーラー、ハイクラス以上なら水冷クーラーを選びたい
- BTOではどの選択肢を選んでも問題ない(純正以外)ので、こだわった高品質PCにしたいならCPUクーラーにお金をかけよう
CPUクーラーは実際のパフォーマンスにはほぼ影響しないパーツだが、ゲーミングPCの健康状態を良くするようなパーツだ。
満足度の高いこだわりゲーミングPCを手に入れたいなら、まずはCPUクーラーをこだわってみると良い。