
「Ryzen7 5800X3DってゲーミングCPUらしいけど、実際どんな感じなの?他のCPUと比べてどれくらいの差があるのかが知りたいな」って人に読んでほしいページだよ。
このページの内容は以下の通り。
- Ryzen7 5800X3Dの特徴を解説
- Ryzen7 5800X3Dの性能ベンチマークを比較解説
Ryzen7 5800X3Dは、2022年4月に発売開始されたAMDのゲーミングCPUだ。
このページを読めば、Ryzen7 5800X3Dがどんなゲーム性能を持っていて、自分に合っているCPUなのかどうかがわかる。
Ryzen7 5800X3Dの特徴
Ryzen7 5800X3Dの特徴は、3D V-Cacheという追加のL3キャッシュ(=CPUを補佐するデータ保管庫)によって、ゲーム性能が飛躍的に向上していることだ。
ゲームではプレイヤーの行動が予測できず(コンピュータから見て予測できないという意味)、行動の度に新しいテクスチャーやサウンドなどのデータをロードしなければならない。
L3キャッシュが少なくて足りない場合、L3キャッシュの10倍遅いメインメモリまでデータを取りに行く必要がある。3D V-CacheによってL3キャッシュを増やすことで、データを取りに行くまで遅延が少なくなり、CPUが処理できるデータ量が増える。結果として、ゲームのフレームレートを高めることができるというわけだ。
Ryzen7 5800X3Dは、ゲーミングCPUとして高いゲーム性能を持つことが特徴だ。
Ryzen7 5800X3Dの性能表を比較
R7 5800X3D | R7 5800X | R7 7800X3D | i7-13700K | |
---|---|---|---|---|
コア数(P/E) | 8コア | 8コア | 8コア | 8コア/8コア |
スレッド数 | 16スレッド | 16スレッド | 16スレッド | 24スレッド |
定格クロック(P/E) | 3.4GHz | 3.8GHz | 4.2GHz | 3.4GHz/2.5GHz |
最大クロック(P/E) | 4.5GHz | 4.7GHz | 5.0GHz | 5.3GHz/4.2GHz |
L2/L3キャッシュ | 4MB/96MB | 4MB/32MB | 8MB/96MB | 24MB/30MB |
PCI-Express | 4.0/16レーン | 4.0/16レーン | 5.0/24レーン | 5.0/16レーン 4.0/4レーン |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR4-3200 | DDR5-5200 | DDR5-5600 DDR4-3200 |
基本消費電力 | 105W | 105W | 120W | 125W |
R7 5800X3D | R7 5800X | |
---|---|---|
定格クロック | 3.4GHz | 3.8GHz |
最大クロック | 4.5GHz | 4.7GHz |
L3キャッシュ | 96MB | 32MB |
Ryzen7 5800Xは、Ryzen7 5800X3DのベースになっているCPUだ。
Ryzen7 5800X3DとRyzen7 5800Xの違いは、推奨用途だ。
Ryzen7 5800X3Dはゲームで役立つ3D V-Cacheを搭載しているので、ゲーム向きのCPUだ。
反面、Ryzen7 5800Xより低クロックなので、総合力は低い。
ゲームメインならRyzen7 5800X3D、クリエイティブ用途や総合力重視ならRyzen7 5800Xという使い分けだ。
R7 5800X3D | R7 7800X3D | |
---|---|---|
定格クロック | 3.4GHz | 4.2GHz |
最大クロック | 4.5GHz | 5.0GHz |
L2キャッシュ | 4MB | 8MB |
PCI-Express | 4.0/16レーン | 5.0/24レーン |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR5-5200 |
Ryzen7 7800X3Dは、Ryzen7 5800X3Dの後継にあたるCPUだ。
Ryzen7 7800X3DはRyzen7 5800X3Dより高スペックだが、最も大きな違いは対応メモリだ。
Ryzen7 5800X3DはDDR4、Ryzen7 7800X3DはDDR5に対応している。
DDR4とDDR5に性能の違いはほぼないが、使用できるパーツが異なる。
Ryzen7 5800X3Dの場合、安価なDDR4対応のメモリやマザーボードを使用できる。
一方でRyzen7 7800X3Dの場合、高価なDDR5対応のメモリやマザーボードを使用しなければならない。
最近ではDDR4とDDR5の価格差は縮まっているが、それでもDDR4のほうが安価なことに変わりはない。
Ryzen7 5800X3DとRyzen7 7800X3Dは、CPU単体の価格差以上の差がPC全体でつく。
R7 5800X3D | i7-13700K | |
---|---|---|
コア数(P/E) | 8コア | 8コア/8コア |
スレッド数 | 16スレッド | 24スレッド |
L2/L3キャッシュ | 4MB/96MB | 24MB/30MB |
PCI-Express | 4.0/16レーン | 5.0/16レーン 4.0/4レーン |
対応メモリ | DDR4-3200 | DDR5-5600 DDR4-3200 |
Ryzen7 5800X3DとCore i7-13700Kの大きな違いは、マルチ性能だ。
Core i7-13700Kは16コアのCPUであり、高性能なPコアと低性能だが高効率なEコアにわかれている。
例えばゲーム+通話をする場合、メインのゲームをPコアが処理し、バックグラウンドの通話をEコアが処理する。
用途によってコアを使い分けることで、コアの性能を無駄なく使い、総合的なパフォーマンスが高くなるのだ。
Ryzen7 5800X3Dは8コアしかないため、Core i7-13700Kと比べるとマルチ性能の差が大きい。
ゲーム+通話の場合、8コアをゲームと通話で分け合うため、ゲームのパフォーマンスが損なわれる。
コア数が必要なマルチタスクやクリエイティブ用途で、Ryzen7 5800X3DとCore i7-13700Kの差が顕著に表れる。
Ryzen7 5800X3Dの性能ベンチマークスコアを比較
R7 5800X3D | R7 5800X | R7 7800X3D | i7-13700K | |
---|---|---|---|---|
PassMark | 27994 100% | 28080 100% | 34851 124% | 47094 168% |
Cinebench シングル | 1491 100% | 1619 109% | 1811 121% | 2126 143% |
Cinebench マルチ | 15003 100% | 15228 101% | 17762 118% | 31062 207% |
※PassMarkはCPUの総合性能。シングルスコアはコア1つぶんの性能で、ゲーム性能に近い。マルチスコアは全コアの性能で、クリエイティブ性能に近い。
3D V-Cacheの効果はベンチマークには現れないということもあり、Ryzen7 5800X3Dのベンチマークスコアは低い。Ryzen7 5800X3Dは少し古いCPUで、比較対象が新しめのCPUということも影響している。
Ryzen7 5800X3DはゲーミングCPUとはいえ、素のパワーは大したことないというのは知っておこう。
Ryzen7 5800X3Dのゲーム性能を比較
R7 5800X3D | R7 5800X | R7 7800X3D | i7-13700K | |
---|---|---|---|---|
Cyberpunk 2077 | 89 | 79 | 108 | 96 |
Watch Dogs Legion | 100 | 86 | 117 | 102 |
God of War | 100 | 93 | 128 | 104 |
Red Dead Redemption 2 | 106 | 99 | 137 | 119 |
Assassin’s Creed Valhalla | 77 | 69 | 107 | 91 |
平均 | 94.4 | 85.2 | 119.4 | 102.4 |
割合 | 100%(基準) | 90% | 126% | 108% |
※グラボはRTX3080、WQHD最高設定
3D V-Cacheのゲームにおける恩恵は大きく、Ryzen7 5800X3Dは中価格帯で魅力的なCPUだ。
Ryzen7 5800X3Dは、Ryzen7 5800Xに10%の差をつけている。3D V-Cacheによって、クロック差を埋めた上で10%の差をつけることができるのだ。
シングルスコアでRyzen7 5800X3Dに1.4倍以上の差をつけたCore i7-13700Kと比べても、8%の差に留まっている。
Ryzen7 5800X3Dは総合力でCore i7-13700Kにぼろ負けだが、ゲーム性能では食らいついている。
価格の安さを求めるゲーマーにとって、Ryzen7 5800X3Dは良い選択肢になる。
Ryzen7 5800X3Dのクリエイティブ性能を比較
R7 5800X3D | R7 5800X | R7 7800X3D | i7-13700K | |
---|---|---|---|---|
Blender | 212 100% | 213 100% | 278 131% | 398 188% |
V-Ray | 10729 100% | 11073 103% | 14285 133% | 20653 192% |
PCMark10 画像編集 | 20183 100% | 17996 89% | 25099 124% | 21512 107% |
PCMark10 動画編集 | 6819 100% | 6558 96% | 8176 120% | 7793 114% |
VRMark オレンジルーム | 15122 100% | 14956 99% | 17345 115% | 16897 112% |
Ryzen7 5800X3Dはクリエイティブ用途に向いているとは言えないCPUだ。
Ryzen7 5800X3Dよりはるかにクリエイティブ性能の高いCPUが存在するので、クリエイティブ性能を求めるなら別のCPUを選ぼう。
Ryzen7 5800X3Dは高いゲーム性能を安く手に入れたい人向けのCPU
Ryzen7 5800X3Dは、ゲーム性能×低価格が特徴のCPUだ。
Ryzen7 5800X3Dは、3D V-Cacheによって高いゲーム性能を誇る。
シングル性能では40%の差をつけられているCore i7-13700Kに対し、8%の差にまで縮めている。
もっと高いゲーム性能を求めるならRyzen7 7800X3Dを選ぶべきだし、マルチ性能やクリエイティブ性能を求めるならCore i7-13700Kを選ぶべきではある。
とはいえ、ゲーム性能も価格も妥協したくないというゲーマーにとっては、Ryzen7 5800X3Dがおすすめだ。
Ryzen7 5800X3Dと組み合わせたいグラボ
Ryzen7 5800X3Dは高いゲーム性能を発揮する一方、より高性能なCPUも存在する。ミドルクラスのグラボであれば、Ryzen7 5800X3Dとのバランスが良いと言える。
Ryzen7 5800X3Dの性能ベンチマークの比較まとめ
このページでは、Ryzen7 5800X3Dの性能ベンチマークを比較した。
Ryzen7 5800X3Dについて振り返ると以下の通り。
- Ryzen7 5800X3Dは3D V-Cacheを搭載していて、ゲームに特化したCPU
- Ryzen7 5800X3Dの純粋なパワーはさほど高くない
- Ryzen7 5800X3Dはゲーム性能×価格のCPU
ゲーム性能だけを重視するならRyzen7 7800X3Dのほうが良いし、ゲーム以外に様々な用途で使うならCore i7-13700Kを選ぶべきだ。
Ryzen7 5800X3Dは、ゲーム性能と価格の両方を重視する人向けのCPUだ。
参考サイト
このページで紹介したベンチマークスコアは、以下のサイトから引用している。
- PassMark:https://www.cpubenchmark.net/
- Cinebench R23:https://www.cpu-monkey.com/ja/
- Blender:https://opendata.blender.org/
- V-Ray:https://www.chaos.com/vray/benchmark
- PCMark10:https://www.3dmark.com/